MENU

ことばのちから(ことだま)

魚が海を泳ぎ、鳥が空を飛ぶように、生き物は、特有の「ご自慢の能力」を授かってこの世に存在しています。私たち人間も、そんな素敵な贈り物をもらっています。それは「豊かな言葉を使いこなす」という、他の生き物には無い能力です。

他にも、特有の言葉で伝え合う生き物はいるでしょうけれど、私たち人間は、とりわけ、複雑な感情や思考を言葉を使って伝え合うことができるのです。私たち人間は、「言葉を最大の力として使いこなす存在」で在るべく、この力を与えられました。この力は、人間だけに授けられた「特別な贈り物」なのです。

なかでも、この日本という国の人々は、言葉の持つ力を敏感に感じて万葉の昔から言葉の力を使いこなしてきました。それを言霊と呼びました。
言霊、、、ことばに出した通りのことを実現させてしまう、言葉のもつ霊力。

霊力と言うと、おまじないのような不思議な力を想像してしまいますが、そんなマジックみたいな力でなくても、私たちは日常、言葉の力を実感しています。

言葉は目に見えない力で、人を動かしてしまいます。人の心を動かします。指一本触れずに。時には、その一言で、ひどく落ち込み、すっかりやる気を失うこともあれば、時には、その言葉で、生きている意味や喜びを見出すこともあります。震えるほど感動し、自分を行動させる莫大なエネルギーになることもあります。

言葉のもつ力は計り知れないんです。

私たち人間は、言葉と、切っても切れないくらい密着して生きています。むしろ言葉の影響を受けない時が無いくらいです。黙っている時だって、自分の中で自己内会話があったり、言葉がぐるぐる回っていたりします。
ですから、どんなボキャブラリーを持っているか、どんな言葉と共にいるかは、その人に大きな影響を与えてしまいます。「口癖が人をつくる」というのは本当です。言葉によって感情も思考も引っ張られてしまうからです。だから、口から出る言葉は、その人のパーソナリティーを正直に語ってしまいます。

逆に、その言葉の力を使って、いつもはまってしまう自分のパターンから、自分を脱却させることもできます。自信を失って気持ちが落ちてきたら、「何があっても大丈夫。何とかなるさ。」と言ってみる。そう思っていなかったのに、言葉の力で気持ちが救われてしまうことは、本当にあります。

時々「ポジティブ思考は苦手、無理にポジティブになんてなれない」という話を聞きます。でも、ポジティブというのは、嫌なものを好ましいと思い込むことではないのです。本来のポジティブスタイルというのは、好ましくない事さえも、「これが学びの機会と捉えたら?成長の為のレッスンと捉えたら?」と明るい側面にスポットを当て直す態度です。自分の気持ちをポジティブに立て直すような問いかけの言葉を与えてみることなのです。

社会的に成功している人たちから「あの時、あんな困難があったおかげで、、、。」という話をよく聞きます。むしろ、「幸運の連続で成功しました。」という話はほとんど無く、何か大変な出来事があって、それを乗り越えることで気づきや学び、成長があって、「そのおかげで、今の自分があります。」という話がほとんどです。

成功している方々は、皆さん同じようなポジティブな捉え方、態度をしているようです。困難や試練の渦中にあっても、「これが自分に何かを教えるために来ているんだ。」という励ましの言葉を自分に与え、乗り越える力にする。困難や試練のネガティブな面だけに引っ張られず、ポジティブな面にフォーカスする。その結果、一見ネガティブな出来事に「そのおかげで」という言葉を与えられるところまで、自分を牽引していくのです。

言葉の力を使いこなす第一歩は、良い言葉をたくさん使うようにしてみること。忘れがちなことですが、自分で言った言葉を、一番近くで聞いているのは自分です。周りの人だけでなく、まず自分自身に、言葉の力が影響します。

次には、自分にしか聞こえない自己内会話に、良い言葉をたくさん取り込むようにすること。そうすると、次第に、内側から明るさや朗らかさが光ってきます。心根が明るい人はとても魅力的です。そういう人と一緒にいたいな、と誰もが思いますよね。自分自身に対しても、人に対しても、発する言葉を大切にする。

言葉の力で、言霊で、自分自身の心も、周りの人の心も明るく元気にしていく。それは幸せな生き方のコツのような気がしています。せっかく授かった力です。「魔法使い」ならぬ、「言葉使い」となるべく、言葉の力を使いながら生きていく。言葉という「特別な贈り物」を使いこなす生き方こそが、私たち人間に授けられた幸せな生き方なのかもしれません。(長塚ゆみ子)

お問い合わせ



 同じタグの記事を見る